
6日目 8月15日(月)
昨日の雨の影響で End of Road の付近は湖ではないけれど、水たまりがそこかしこに出来ている。そうだ!! ピットに着いたら急いで バイクに飛び乗り End of Road の方向に戻っていく。雨の影響でいたるところがボコボコになっていて、水と塩の跳ね返りで下半身は泥と塩まみれでグチョグチョになっていく。全てのクル マ、バイクがピット方向に進んでいるのに対して一人逆方向にゆっくり戻って行った。一番大きな水たまりを探そう! すげぇ、こんな景色写真で観た事ある!
一時間以上ウロウロしてからピットに戻り朝ご飯を食べていると、向こうから自転車に乗った人がこちらに向ってくる。遂に来た!! やっと会えたぞ!! Zap-san!! この人に会いたかった!! 今年の3月から4月にかけて僕は、MOON ILLUSTRATED Vol.7 の仕事で Zap-san と仕事を一緒にさせて頂く機会を得た。 USA と日本での仕事なので連絡はメール。最初は丁寧な口調でのメールのやりとりだったけど、もう途中からは「このタコ野郎!!もう少し頭使え」だとか「ちくしょう!! もう一回!! もうちょっと待って」だとかの本音の塊の投げ合いぶつけ合い......締切当日、印刷会社が来る直前まで「あと15分しかない!!」「オレ知らね」「ダ メだ! 絶対に寝ちゃだめだ」怒濤のように連絡をとり、色々な事を教えて頂いた USA 在住の Photographer。「どうだ、いっぱい撮ってんのか」 「撮ってるけどまだまだわからない事だらけ」「何が?」もうそこからは、疑問に感じていた 事、撮影の際にうまく解決できない事をベラベラベラベラ話した。「こうすればいい」「それは誰だってわかんない」Zap-san から返ってくる言 葉の一つ一つ から少しずつわかってきた。昨日の雨上がりのように、もやもやしていた部分から光が見え始めた。「ところで本当に自転車で全て移動するんですか?狂ってま すよ」「そう、だからオレの自転車をやる。お前のバイクと交換しろ」「嫌だ」
Chico-san 達 MOONEYES Crew も一走ごとに次のRunに向けて色々な事にチャレンジしている。 Jet を変更し、そしてタイヤを変更する 185.859マイル、208.766マイル、210.912マイル....確実に Record が上がってきている。 Zap-san は相変わらず膝が塩まみれになっても構わず撮影をしている。僕も動けるだけ動く。膝をつく、飛び上がる、寝そべる、転がる、足の裏にまめが出来る事は今ま であったが、今回、生まれて初めて足の甲にまめが出来た。どんな体勢をとり続けたらこんなとこにまめが出来るのだろう。









































7日目 8月16日(火)
Bonneville での取材、撮影が出来る時間は残り二日。最初の何日かは何処で撮影すればいいか思考錯誤で、オフィシャル スターターに「そんなところで撮影しちゃダメだ」と度々お叱りを受けていたが、この日もオフィシャル スターターに手招きされる。「え?又なんかやっちゃった?」と怖々歩いていくと僕の肩をがっちりとつかみ「顔大丈夫か?」と心配してくれていた。顔は、日 焼けでワニのようにヒビ割れバリバリと音を立てながら剥がれていき、唇は黒く出血していたけど「ノープロブレム」と笑いながら言った。 Chico-san 達クルーはピットでの一走目に向けて準備も完了し、さぁ行くぞというところでFunny Car Team, Jim Dunn Racing の Big Jim Dunn がMOONEYES ピットに来て、メカニカルな内容な Meeting が始まった。皆の表情は真剣そのもの。彼が去るとピットは慌ただしくなった。Quick Change (デフ) の Gear 比を 3.3 to 1にする交換作業が始まったのだ。Speed を追求する為、可能性があるならばどんな事でも挑戦していくのが Land Speed Race なんだと強く感じた場面だった。他のモータースポーツのようにスタートは一斉にスタートする訳ではないし、レコードを達成した瞬間は周りに誰一人もいない 孤独の空間だ。地味だと思う人もいるかもしれない。でもそれは大きな間違い。誰にでも均等にチャンスがある、金も権力も関係ない、自分達次第。 一 度レコードを記録しても翌日のリターンランでもう一度記録を出さないと記録は残らないから奇跡はない。
MOON ILLUSTRATED Vol.8 の取材で、とあるチームの取材、撮影をしていた時。 そのチームはその日にクラスレコードを達成し、IMPOUND エリアにいた。ただレコードを超えたランの時にエンジンが壊れた。IMPOUND エリアでの整備できる時間はルールによって限られている。目の前で、黙々とクルーがエンジンをバラしている。僕は、少し離れ膝をついてその場の緊張感を撮 影していった。 「SUMI」クルーの一人が僕を呼んだ。彼は体中オイルと塩だらけ、手にはスパナを握ったまま、間をじっくりとってゆっくり僕に 言った「This is Hot Rodding...」そしてほんの少し笑みを浮かべながらスパナを櫛に見立て頭にあてているジェスチャーをする「Not Hot Rodding、Understand?」彼だから言える言葉。僕は何も言えず、うなずくだけだった。
Chico-san は、210.610マイル、あと10マイルでワールドレコード、悪くない次こそいけるのかとこの日から Bonneville を訪れている MOON Cafe Italy の 3名の新しいクルーと期待した2回目のランはスピン。まだ明日がある。希望の明日だ。
僕の方は全く順調に進まない。まだまだ取材撮影する予定でまだ撮影出来ていない写真が山のようにある。レースが第一なので、なかなか僕が考えてい る予定の通りには進んでいかない。あれもこれもまだ撮影していない、しかも事情によりこの日予定していた撮影は出来ない事になる。僕にとっては絶 望の明日になりかけている。6時を過ぎても日射しはきついけど今日のレースはほぼ終わりに近づいてきた。コースのスタート地点でZap-sanと 会う。僕が何の撮影をしているか知っているので「どうよ」と聞かれ「あれも撮らないといけないし、これも撮らないといけない。もう間に合わないか もしれません」と弱音を吐く。「もう一回何が本当に必要なのかよく考えたほうがいい」どうすりゃいいんだ。
夜、考え事をしながらモーテルで膨大な洗濯物を片付け始めた。スーツケースにどんどん入れていくと一枚の紙が出てきた。そういえば出発当日、同じ MOON Space Agency の同僚たちが目を離した隙にスーツケースの中を色々いたずらしてたな。スタッフ集合写真をプリントした紙の裏に、赤ペンで「辛くても頑張って!」とふざけ て書いてあった。本当に馬鹿だなー、でも何か吹っ切れた。ドンと来い最終日!!

































8日目 8月17日(水)
最終日。朝ご飯も食べず、日焼けの薬もつけず、バイクの塩だけ落として MOONEYES のピットを飛びだす。朝日を背に4速全開、前屈みでリターンランが行われているスタート地点に向かう。まだ太陽も気温も低い。低い太陽に向かって走り出す Race Car から目を離さずついていく。リターンラン Start!! 僕も今度は朝日に向かって全開で走っていく、途中違う取材していたチームクルーのクルマが僕に向かって「ヒィー!!ハァー!!」と楽しそうに叫びながら抜 かしていく、さてはレコード達成したな。ピットエリアも全開で通りすぎる。MOONEYES ピットに Race Car が無いという事はもう皆、スタート地点に向かっているんだ 「頑張って!! Chico-san」パラシュートを開いて止まっている地点まで全開で走る。い た!! 今度はオフィシャルの方向に Push される Race Car と同じ速度でついていく。撮影も後半になるとバイクで走りながら手をアクセルから離して撮影する事に躊躇しなくなった。前屈みで全開に走り、追いついた ら、撮影する、 全開、撮影....と繰り返し、どうやらその姿がおかしいらしく後で笑いながら僕の動きを真似して話しかけられる事が何回かあっ た。 今までのタイミングの悪さが何だったのかと思うぐらいこの日は、順調に進んでいった。よし!! Yoshi-san より電話が入る「Chico-san 220.898マイル!」やった!! Chico-sanも遂に来た!! IMPOUND エリアには #533 Race Car と笑顔の MOONEYES Crew の姿が!! 3年前と同じ景色を観る事が出来て本当に幸せ。色々な方が祝福に来られる中、 明日のリターンランまで4時間という限られた整備時間でそれぞれ Crew は忙しく動いていく。明日、220マイルを出せばワールドレコードを奪還するのに加え、念願だった 200マイルクラブへ入会する事が出来る。 この日ようやく、予定していた全ての MOON ILLUSTRATED Vol.8用の取材撮影が終わった。本当にギリギリだった。余裕をもって計画していたつもりがこんな事になるとは思いもしなかった。 さぁ明日は #533 Race Car のリターンランだ!!

































9日目 8月18日(木)
朝5時過ぎ、Boss から「起きろ!! Big Day」だとメールが入る。いやいや緊張で寝つけなくて朝3時に目が覚めてます。5時に IMPOUND エリアに入る。夜明け前の IMPOUND エリアはピット エリアとは又違う緊張感がある。7時、スタート地点に向けてオフィシャルの誘導が始まる。一斉にゆっくりと前日レコードを記録した Race Car がスタート地点まで Push又は、牽引されていく。一台、又一台と Startしていく。Chico-sanも少し又少しとスタートラインに近づいていく。さぁ次だ。僕は Push Truck に乗らず、スタートを見送る事にしていた。#533 Race Car がスタート!! 1速、2速にシフトアップする....そして、そのまま左にそれてリタイアするのを確認した。ティムと空を見上げる。 MOONEYES 2011 Bonneville Speed Week は終わった。

























10日目 8月19日(金)
昨日は、深夜にMOONEYES USA に戻ってきて、今日は朝から片付け。洗っても洗っても塩が無限増殖のように出てくる。Bonneville に滞在中ずっと一緒にいた Honda もきれいさっぱり。昨日まで Bonneville をガンガン走ってたんだなぁと感慨深くなる。 ティムが今回の僕のバイクの走行距離を教えてくれた。 250マイル、400キロもの距離をこのバイクで移動してたのか。本当に有り難う!! Chico-san達レースクルーは #533 Race Car をバラしていく。10月に Bonneville で開催される World Final に向けてもう動き出している。これが何年も何年もずっと続いていくんだろう。チコさんのレポートにある通り今回の Speed Week でどうすれば記録を伸ばしていけるか Chico-san 達クルーも掴んできたんじゃないだろうか。次のレースでレコードが達成される事を祈ります!! 僕は深夜の便で日本に向かった。









11日目 8月21日(日)
朝5時、小雨混じりの羽田に到着。着替えも最後はなくなり、Vans も Dickies も塩まみれのまま、肌はボロボロ、こんな外見でよく飛行機に乗れたよ。 Boss が迎えに来てくれていた。「どうだ!! 楽しかったか!!」「!!!!」無我夢中で毎日を過ごしていたんで、まるっきりこの旅を振り返ってない。この時ようやくこの旅を振り返った。
毎回思う事、僕がこんな貴重な経験が出来たのは、色々な人に助けられていたから。今回、レポートの中で"ひとり"というワードを何度も使ったけ ど、これは MOONEYES Race Crew、MOONEYES USA All Staff、MOONEYES JAPAN All Staff、旅で出会った全ての人達、そして家族のサポートによって出来た事。自分だけでは何ひとつ出来なかった。
撮影、写真について... 3年前の自分には勝てた。400キロの距離を走って、 色々なモノを目にする事が出来た。気持ちいいぐらい Bonneville で感じた事は非現実的でいい意味で狂った事の連続だった。あの場所には、夢がある。だから今「あの時、あぁしとけば良かった....」的な後悔は全くな い。
振り返って「本当に楽しかったです。」と自信を持って言えて良かった。
でも、これで僕の旅は終わったわけじゃない。今回紹介していない、Bonneville で取材した内容は11月に発売予定の MOON ILLUSTRATED Vol.8 でしっかり紹介します。だからここからの2ヶ月の制作期間は毎日脳みそから湯気を出しながら、 Bonneville に Trip です。
楽しみにしてて下さい。
最後まで有難うございました。 PAN
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